はこだて国際科学祭2021ご報告

大人の科学バー in はこだて国際科学祭2021「北海道のワインと地質のはなし」

2021年8月26日、大人の科学バー in はこだて国際科学祭2021「北海道のワインと地質のはなし」が行われ、スピーカーの一人として参加させて頂きました。


函館市民による国際色豊かな科学祭で、函館開港150周年となる2009 年より毎夏、複数エリアにて展示、講演会、サイエンスショーや実験教室など、函館市民による国際色豊かな科学イベントです。


「北海道のワインと地質のはなし」は、2020年から始まり第二回目

スピーカーのメインは、後藤忠徳さん(兵庫県立大学教授)で、そして、片岡寛孝さん(函館「シャカン・セ・グー」店主)、畠山泰英さん(編集者,キウイラボ代表)、そして私が加わり、北海道のワインに関して地質をメインに話すという内容です。


昨年は、道南地区で文字通り科学祭の舞台となる、函館エリアで生産されるワインでしたが、今回は空知エリアのワインについて話しました。


空知エリアは北海道の中央である道央に位置し10市14町で構成されており、札幌の北東約30キロで高速道路または鉄道でアクセスできます。


エリアと聞くと、一つの群のようなイメージですが、空知の大きさは非常に広くて、東京都と神奈川県を足した面積の約1.25倍という非常に広い場所を指します。


このエリアは、栗澤ワインズ(KONDOヴィニヤード、ナカザワヴィンヤード)、山崎ワイナリー、宝水ワイナリー、10Rワイナリー、TAKIZAWA WINERYなど最近注目の生産者が集まっています。


さる7月に北海道ワインアカデミーの講義を行うため北海道を訪れた際に、空知エリアのワイナリーを訪問する機会に恵まれたために、その記憶を頼りに今回はワイン担当で参加いたしました。


そこで、今回は地質のプロである後藤先生によるナビゲートで、ワイングラスの向こうに広がる1,000万年前以上(先生によると地質学ではつい最近)まで遡り、北海道の成立ち、日高山脈が生まれる背景、更には空知エリアができた経緯などを説明してもらい、さらには、その地質から考えられる土や水の成分、地下水の高さなどまで解析しました。


こうした、ワインを育てる土壌、ワインの世界でいうテロワールを単なる思い込みや妄想で語るのではなく、現在誰もがアクセスできるWEB上のツールを駆使して地面の中を分析し、どうして特定のテロワールが成立したのかを推察することは非常に貴重な体験で、参加者一同ワクワクの時間でした。


こうしたことから、この空知エリアがどうして美味しいワインの産地になったのか?

また、今後100年後にもっと美味しくなるポテンシャル、さらには現在の地殻変動から日本の形が将来は変わるなどという話をしていく中で、どんどん引きこまれた楽しい時間でした。


シャカン・セ・グーの片岡さんは、北海道のワインに造詣が深く、多くの生産者とお付き合いがあることから生の声を届けてくださいました。また、片岡さんは事前に我々スピーカーに、空知エリアの生産者の一人であるKONDOヴィニヤードのナカイ・ミュラワ2020を手配くださり、我々は記帳な予習をさせてもらいました。片岡さんのご親切には感謝が堪えません。


KONDOヴィニヤードの近藤さんも、参加くださいました。彼のワインは、自然酵母で発酵させた微発泡性の白ワインです。柑橘の特徴が非常にキレイで、酸化防止剤である亜硫酸を使用していないので魚介との相性が非常に良いと思われるスタイルでした。


スピーカーの一人であるKIWIラボの畠山さんは、シシャモなどと最高のマリアージュだったので驚かれたと言われましたが。この辺りも科学的な裏付けが成せるものでした。


また、後藤先生の分析では、このエリアは日高山脈の火山に近いものの、偶然ある作用で火山特有のアルミナや鉄の含有量が少ないエリアということで、鉄が少ないことから、ワイン中の鉄も少ないと推察され、魚介との相性を邪魔する鉄が少ないことも、シシャモを乗りこなすというこが証明できるようです。


ワインというお酒は、ブドウを原料として一切水を加えずに醸造します。そのため、ブドウの品質とキャラクターがワインを決定づけますが、そのブドウを確定するものが、土、水、それを確定する地勢、そして気候という自然の要素です。


もちろん、人間が栽培で介入してブドウを生育するので、これも少なからずブドウに影響しますが、それよりも先ず自然環境が決定的に大きな影響度を占めています。


たった一杯のワインですが、されど一杯のワインで、そのワインの背景には、原料ブドウがあり、そのブドウを育んだ土があります。そして、この土こそ、何千年、何億年という地質の変化により生まれたもので、ワイン一杯からそこまで遡ることができることが知れたのは非常に有意義な体験でした。


科学を肴にワインを飲みましょう!というコンセプトで始まった今回のイベント、本当にクセになりそうな内容で、今後も継続してゆけたら幸いです。


ご参加頂きました皆様ありがとうございました。


尚、今回テーマ使用したKONDOヴィニヤード ナカイ・ミュラワ 2020について、oenolutionのインスタグラムで紹介をしていますので是非、してみてください。


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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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