ワイングローワーとは?

エノリューションの活動の中にワイン教育・啓蒙があり、その志を支える

「ワイングローワー」というカリフォルニアで学んだ精神があります。


ワイングローワー(Winegrower)を辞書で引くと、
「ブドウ栽培兼ぶどう酒醸造業者

:a person who cultivates a vineyard and makes wine」となります。


一方で、カリフォルニアで私が教わったものは、Winegrowerとは

「ブドウとワインを育て、人と技術を育て、消費者とワイン市場を育てる者」

という壮大なスケールの仕事を指しています。


一般的にワインを造る者やワイン生産者をWinemakerと呼びますが、英語の“make”は短期的な造りの動作を指し、かたや“grow”は長期的な活動をあらわすようです。



偉大なWinegrowerたち

1990年代、ナパヴァレーのワイナリーでアシスタント・ワインメーカーだったころ、参加したASEV(アメリカワインブドウ学会)の一環で開催されたパーティーで一人の高齢な醸造家とワインを交わしながら話したなかで、彼の名刺の肩書きに目がとまりました。


「Justin Meyer, Winegrower Silver Oak Cellars」


パーティーの席上で彼は
「ワインは、短期的に造るだけでは完結しない。ブドウを育てるのに時間が要るように、人、技術を育ててこそ良いワインができ、それを感謝してくださるお客様と市場を育ててこそ産地とワイン文化が確立する。だから私はワイン醸造家のWinemakerよりもWinegrowerの視点で仕事をしているのさ!」
と優しい笑みと共に肩書きを説明してくれました。


後でその醸造家が、ナパで有名なシルバー・オーク・セラーズのCo-founder(協同設立者)のジャスティン・メイヤーだったと知りました、、、


その後、ナパに戻り、時折参加していたNapa Valley Vintners Association(ナパヴァレーワイン生産者組合)の会合で、ロバート・モンダヴィ氏が前出のジャスティン・メイヤー氏と全く同じことを語っており感銘を受けたことを鮮明に覚えています。


また、後に私が醸造責任者になった際、ワイン醸造のサポートをしてくださったコンサルタントの、ディミトリ・トリチェフ氏は、技術を伝授するなかで、彼の父でナパヴァレーのワイン醸造の父であった、アンドレ・トリチェフ氏(Andre Tchelistcheff 有名なエノログでフランスのパスツール研究所出身、戦前、戦後のナパでワイン品質を世界クラスにした貢献者)の偉業で、多くの技術を根付かせたとともに技術者を育てたことを話してくれ、ワイン産地の形成で時代を超えた技術の育成と継承の大切さを知ることができました。


ブドウからグラスまで、多くの人々によりタスキが繋がれてワインは完成します。


そして、その各過程において時間によって醸成された経験と技が、ワイン文化の水準を高めています。


今、わたしたちが立っているワイン文化の土壌というのは、一朝一夕でできたものではなく、かつてワインに携わった偉大なワイングローワーの先人達の偉業によって成されたもの。


だからこそ、ワイングローワーという壮大なスケールの取組みを、私に教えてくれた今は亡き前出の先人達への感謝を込め、エノリューションはワイングローワーの精神を心の核としてゆきます。

#ワイン #ワイン好き

エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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