東日本大震災、10年目にして思う事


2011年3月11日 午後2時46分。

東日本大震災当日、山形県のワイナリーで勤務中でした。突然感じた長い揺れの大きさから、他の従業員と一緒に多く雪の残る屋外に避難しました。幸いにもワイナリーのダメージは皆無でしたが、屋外に立った時に足下のアスファルトがベッドのマットレスのように撓んだことを記憶しています。


その後、ワイナリーの内部損傷を手分けして確認すると、配管の破れ、ワインを貯蔵していた樽やタンクの倒壊、またパレットに積んであったワインボトルの入った箱の荷崩れは一切なく安堵したことを覚えています。


長く感じた揺れは、主に横揺れで樽ラック(樽2個/ラック)を用いて4段に積んだワイン樽は、ちょうどタワーが横揺れでしなるように揺れて幸いにも崩れていませんでした。また、ワインボトルの入った箱が積まれたパレットは、ワイン箱の一番上段をグルリと一周ヒモで巻いてキッチリと結んで固定しており、このため横揺れでも大きなズレは起きませんでした。

これは、常にトラックによる横持ち輸送で契約している倉庫会社へ移動するために行っていた習慣だったのですが、ワイン樽や、ワインボトルが12本入った箱は、横揺れの中で自らの重みが慣性の法則により戻ろうとするために崩れにくく、これが損傷を生まなかったと後から解りました。


山形県でのワイナリー勤務の前に、ナパ・ヴァレーのワイナリーでも地震を経験しました。1989年のサンフランシスコ大地震と、2000年に起きたヨウントヴィルの地震です。


特に2000年の地震は、ワイナリーの北数キロのヨウントヴィルを震源地で揺れが大きく、深夜1時36分に起き真夜中にワイナリーに駆け付けた記憶があります。


ワイナリーでは、売店の棚に横置きされたブルゴーニュ形状壜の白ワインはほぼ全てが棚から投げ出され割れて、壜の片付けとワインを拭き取る作業に追われましたが、直線的なボルドー形状壜の赤ワインは棚に留まり、改めて安定性のある形状のものは自重さえあれば揺れに強いと知りました。


これらのワインを輸送する際に使用するパレット上のワイン箱も、現地の習慣で一番上段を結束バンドで巻いて固定する方法が取られていたので、幸い倉庫のパレット上のワイン箱や樽ラック上の樽にもダメージはなく済みました。


その後、カリフォルニアのワイン業界では、樽ラックにてワイン樽を保管する際に、一番上部の樽ラック上の樽を揺れで動かないように木材や金属枠を載せて結束ロープなどで固定することで、4段から6段に積んだ場合、地震で倒壊するリスクを抑えられることが解り多くのワイナリーで採用されるデフォルトとなりました。これがイメージ写真です。


(出展 Topco, Inc.)


地震大国の日本で、ワインを造るうえで、安全を確保する為に改善できるところは多いと思います。同じく地震の多い北カリフォルニアのナパ・ヴァレーは2014年にも大地震が発生し、多くのワイナリーが被害に遭いました。そうしたなか、彼の地でリスク低減のためにうまれた知恵の多くは、日本でも充分に参考になります。


知恵を出し合い、被害を最小限におさめる方法を今後も書いていきたいと思います。

今も、自宅に戻れない方々が、ご遺族を亡くされた方々、被災された方々の心が少し癒える事を切に願っております。


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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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