珈琲とワイン(カフェインとアルコール)の関係について
学生のとき観た、バック・トゥ・ザ・フューチャーを久しぶりに観ました。
30年前にタイムスリップした主人公マーティはカフェテリアで、ドクの家の住所を電話帳で調べる。そこで、店の主人のルーに、「何か注文したらどうだい?」と言われる・・・
ルー:「何か注文したらどうだい?」
マーティ:「えーと、そうだね。Tabをお願い」
ルー「タブ?何か注文しないと、Tab(伝票)はやれないよ」
マーティ「そうだね。じゃあ、PepsiのFreeを」
ルー「Pepsiが欲しけりゃ、金を払ってもらわないと」
この何年か後に卒業、とあるCoca-Colaボトリング企業に就職、ワイナリー駐在として渡米しNap Valleyでの生活が始まる。映画のTab(Coca-Cola社のノンカロリーコーラ飲料)やPepsi Freeなど合成甘味料で甘味をつけたシュガーフリー(砂糖抜き)飲料がスーパーの棚にひしめくのに驚きました。それと、Free という単語の意味が “自由” だけでなく、“抜き” であることにも!です。
そのなかに “もう一つのFree“ としてカフェインフリーの清涼飲料もシェアを占めていて目を引きました。Coca-Cola社のSpriteや競合の7UPまで、カフェインフリーと書かれ「どう見ても色見たら判るよね!?」と思いつつ、砂糖と同様にカフェイン抜きを好む消費層が多いようでした。
米国に赴任したころ、飲食店でオーダーするとき憶えたての英会話のなかで「この国ではコーヒーを頼むときに、Regula(レギュラー)かDecaffeinated(カフェイン抜き)と伝える」と会社の先輩から聞きました。
ダイエットや糖尿病などの健康上の理由から砂糖抜きは理解できるのですが、カフェイン抜きの市場の背景がイマイチ附に落ちなかったので現地の人に聞いたところ
➀ 妊娠中の女性や小児への影響、
② 他の薬との弊害、
③ 宗教上の戒律 など
と知り 改めて、アメリカの多様性には目を見張った覚えがあります。
それから、30余年の今… 日本の清涼飲料市場でカフェインフリーが伸びており、各社が技術を競いコーヒーや茶系飲料を開発しているニュース。コロナ禍で自粛や在宅勤務が増え、自宅での清涼飲料の摂取が増え、また夏が到来し水分補給に向けた砂糖抜きの茶系清涼飲料の需要が伸びています。
ワイン醸造を糧とするエノログ目線から記事を読んでみると大手メーカーの技術陣は、コーヒーや茶葉などからの抽出において前処理や温度条件などを駆使し、カフェインを抜きつつ骨格と美味しさを追求しているようで、その内容だけでも商品を手にとってテイスティングするための喉が鳴ります。
さて、ここから本日のテーマ
:カフェインとアルコールの関係に関して詳しく書いていきます。
カフェインとアルコールは両方とも刺激物で同じように捉えられるが大きく異なります。
まず、カフェインとは興奮作用で目を覚さまさせ、神経をハッキリさせます。眠いときや気分転換をしたいときにコーヒーやお茶を一服!というのは当たり前の飲み方ですね。
一方、アルコールは致酔作用によりカフェインとは逆に神経をボンヤリさせ、人によっては眠くなる場合もあります。「仕事の後に一杯!飲んで体の疲れをほぐし」というのは人類が古来より飲酒文化を形成した背景の大切な習慣です。
そして、この二つを同時に摂取すると起きるのが、カフェインの興奮作用でアルコールの致酔作用が相殺され感じにくくなることが起きます。簡単に言えば酔いを感じなくなるこですが単純に喜べません。なぜなら、体内ではカフェインによってアルコールの濃度が低減されている訳ではないので、二つを同時に摂取することで、飲み過ぎるリスクがあるからです!
言ってみれば、コーヒーでワインの酔いを掻き消していても、体内の血中アルコールは蓄積されるので、カフェインによる興奮作用が “無効化” したときには “飲み過ぎ赤ランプ” が点滅し、血中アルコール分解の残高は翌日繰り越され、“痛い思い” をすることになります!
そこでこのトピックに関し「ラム&コーク、コーヒーリキュール、アイリッシュコーヒーは?」という質問もよく挙がるので説明します。
これらに含まれるカフェインの量は非常に少なく、上記の到酔作用の相殺が起るほどにはならないことがわかっています。しかしながら、アメリカの保健局 FDA(Food & Drug Administration)は、高いカフェインを含むアルコール飲料を製造する会社に対して、アルコールとカフェインが及ぼす健康的リスクを理由に勧告し、製造工程においてカフェインを含有させることを止めさせた報告があります。
こうした、事実を踏まえてワインとカフェインの “食い合わせ” ならぬ “飲み合わせ” に気をつけられることをお奨めします。
ワインのあと、ちょっと息抜きにコーヒーやお茶で口をサッパリと!(私も、1日に100以上のワインを審査する時の傍らには口直しに冷えたアイスティーを飲んで舌を休めるクセがあります・・・!)と言うときには、流行りをみせてきた各社新開発の美味しいカフェイン抜き清涼飲料というオプションがありますね!
よく赤ワインに含まれるカフェイン酸(カフェ酸ともいう)とコーヒーやお茶などに含まれるカフェインを混同して一緒にしている方がいらっしゃるので整理します。
ワインに含まれるカフェイン酸はコーヒー酸ともよばれ、抗酸化剤のポリフェノールの一種でコーヒー豆にも含まれますがブドウなどの果実にも含まれます。一方、コーヒーに含まれるカフェインは名前こそはカフェイン酸に近いですが、ポリフェノールと全く分子構造(物質を組立てるビルの骨組みみたいなものです。)が異なる別物です。
結果、赤ワインにはカフェインは含まれていないので、カフェイン抜きのポリフェノール飲料となります。一方、コーヒーにもクロロゲン酸とよばれるポリフェノールは含まれていますので、適量なら血液サラサラ効果を促すので、こちらはカフェインを含むポリフェノール飲料ということになります。
化学物質の名前は似たようで異なるものがあり面倒ですよね!(^▽^)
長くなりましたが、お読みくださり有り難うございました。
ご自宅で時間を過ごすことが多い今日この頃ですが、皆さまがた健康を気遣い楽しく美味しく毎日を楽しみましょう!
コメント等を頂けると励みになります!
#ワイン #エノログ川邉 #珈琲 #コーヒー #カフェイン #アルコール
0コメント