道産ワイン懇談会様オンラインセミナーご報告

2021年4月15日

道産ワイン懇談会 様 主催のオンラインセミナーにて、『HACCPの概念におけるワイン製造の衛生管理』の講義いたしました。


東京オリンピックの開催に伴い食品衛生法の改正により、2021年6月1日からHACCPは完全施行となります。


東京五輪2020を目指し2018年に改正された食品衛生法のひとつとしてHACCPは義務化が決まり、その義務化は昨年の6月1日に施行され一年の猶予期間をもって、ワイナリーをはじめ酒類製造業も他の食品製造業同様に義務化の対象となりました。このため、あと僅かな期間でワイナリーを含む食品業界はHACCPの義務化が求められ、今がまさに秒読み段階といえる時です。


HACCP(ハサップ)とは『Hazard Analysis Critical Control Point』 の頭文字で、これが意味する“危害分析重要管理点”に基づいた製造管理を指し、1960年代にアメリカの宇宙食をつくる管理技法としてうまれました。


病院のない宇宙空間で、宇宙食の不備で食中毒を起こせないという、極限の精度を製造に求める中で、習慣や言語の異なる人々が働くアメリカの製造環境で生まれた技法で、製造工程における危害をあらかじめ分析し、それを取り除く対策を講じるのがHACCPの根幹です。


北海道では、古くからある大手や中堅サイズから小規模のワイナリー、また最近増えつつある新規のワイナリーなど多種多様のワイナリーが活気づいています。また、最近では海外の著名なレストランのオンメニューに輝くワインを生産する優良ワイナリーも目立ち、日本ワインでは良質ともに急躍進が目覚ましい産地です。


そうした中、多くのワイナリーが、ワインという共通の製造対象物のもとで、類似した危害要因を抽出し、その対策をシェアすることは産地としての強みであると気づかせていただきました。


今回、多くの小規模ワイナリーが行なう『HACCPの考え方を取り入れた衛生管理』に更なる重要管理点(Critical Control Point; CCP)を付加することで、一層の管理を行い、完成された製造マネージメントを行なう事で産地ブランドを確証することも可能だと感じました。


コロナ禍の毎日、多くの飲食店をはじめ来場者を扱う職種では、様々な衛生管理を行い、感染防止に努めています。日々のニュースや新聞に映るそれらの努力は、相当のものであるはずで、つねに第三者による一定以上の水準を期待されるプレッシャーのもとで、お仕事をされていると想像します。


現代において、主観的な努力はさることながら、多くの不特定多数のお客様を対象にした事業においては、各自治体が飲食店などの業種に求めるような、客観的に水準を保証される努力が求められます。


HACCPの義務化は決して楽なものではないことは、実際のワイナリーの現場で導入した経緯を知る自分が肌で感じています。しかし、今日、食を扱う仕事に就く我々に課せられている衛生管理の努力の水準は、同じように決して楽なものではないのでしょう。


安心、安全を安定させるための努力、経口摂取というお客様のお口に入り、幸せと豊かさを提供する仕事をもう一度見つめ直すチャンスかもしれません。


短いセミナーでしたが、道産ワイン懇談会の方々の熱い眼差しをオンラインで感じ取れるような濃縮した時間でした、


この様のセミナーの機会を頂きました道産ワイン懇談会様、及びご参加頂きました各ワイナリーの皆様にこの場をかりてお礼を申し上げます。


#ハサップ #衛生管理 #ワインセミナー #道産ワイン懇談会

エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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