北海道訪問報告 Part 4

北海道ワインアカデミー 座学編

7月9日 北海道大学にてワインアカデミーの醸造コース講義2の座学が行われました。

この日の講義は、第一講義から第四講義までの4つのパートに分かれた講義で、ワインに影響を及ぼす微生物や発酵管理、衛生管理、品質管理を中心に、高品質のワインを造るためのトピックを中心に行われました。


第一講義 「ワイン醸造に影響を及ぼす微生物について」

北海道大学大学院農学研究院の曾根輝雄教授が、「ワイン醸造に影響を及ぼす微生物について」という演目の講師を務められました。


内容は、ワイン造りに関係する微生物の基本的知識と汚染微生物を抑制する亜硫酸の正しい使用方法、また最近の北海道大学で行われている新たなワインに関係するプロジェクトや研究のご紹介です。


北海道では、道産ワインの教育研究拠点となる寄附講座、「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」が2021年4月1日に開設され、今後はワインに関わる研究や教育の一層強化を図るとのことです。


スケールの大きな北海道のワイン産業を中心としたつながりが生んだ産学官連携の大きなプロジェクトに、これからも目が離せなくなるでしょう。


第二講義 「ワイン醸造と微生物に向き合う姿勢」

科学と自然の融合を捉える姿勢、HACCPによる衛生管理と、その発展形となるワインでの衛生管理、また異なる微生物の選択によるSWOT分析という内容で、講師は、エノログ川邉が務めさせて頂きました。


乾燥酵母のような選抜された微生物によるワイン造りと、自然由来の微生物によるワイン造りの、強み・弱み・機会・脅威の観点からの比較と、その克服法を受講生とともに「ワイン醸造と微生物に向き合う姿勢」という題目のもと、受講生の皆様に共有させて頂きました。


昨今、新しくワイン造りを志す多くの人が、自然由来の微生物でワインを造ることに挑戦するトレンドと、その背景に潜む危害、リスクとHACCP的に思考で予想し、取り除くための戦略や戦術の構築方法を紹介しました。


今般のようなコロナ禍でなければ、本来なら各受講生が参加して、グループなどでメリットやデメリットなどを列挙し、構築のステップを共有したかったのですが、今回はスライド上でお見せする形式となりました。


第三講義 「ワインの品質管理の基礎」

山梨大学 ワイン科学研究センターセンター長 奥田徹 教授が講師をつとめ「ワインの品質管理の基礎」という演目で、科学的な見地から、現在の社会を見据えた、最低限のレベルのワインを造るという観点で、先ず初心者は品質において問題のないワインを造る方法を多岐にわたりご紹介頂きました。


ワイン醸造では、原料から製品までの工程で、様々な化学変化がおき、その時々において酸化や微生物汚染など本来の品質である味、香り、外観を劣化させる事象が起きます。


これら品質に影響するケースでイラストを多用して非常に解りやすく、科学の初心者にも分かりやすい内容で説明されていました。


印象に残った言葉は、「ワインは100円のワインから100万円を超えるワインがあるが、アルコール製品として問題ないワインを造ることが大事」というフレーズで、これは、新しくワイン造りを志そうとする方々にとって大きな影響になったのでは、ないでしょうか。


第四講義 試飲とコメント

最後の講義となるは、ワインアカデミー校長の田辺由美先生を中心に、曾根先生、奥田先生、そして私の4名で、あるテーマに沿って選抜されたワインを受講生とともに試飲し、コメントする講義となりました。


(左:田辺由美校長、右:エノログ川邉)

今回のテーマは「今回の講義で学んだ微生物や発酵管理・衛生管理の重要性から、一般的な醸造方法で製造されたワインと自然発酵で醸造された同一品種ワインの比較テイスティング」でした。


これに沿って、自然由来の微生物を使用したワインの数々とともに、乾燥酵母などを使用した一般的な醸造方法で製造されたワインが比較され、その違い、欠陥の有無、またヴィオデナミなど特殊な定義の下で造られるワインにおける醸造方法のオプションなどに関して話されました。


改めて、今回の北海道ワインアカデミーの講義の内容は非常に密度の高いものであり、受講される方々の真剣度も非常に高く、毎年、この中から6~8件の新規ワイナリー起業者が生まれる背景を良く読み取ることができました。


受講生の方々は、様々なバックグラウンドを持った方であり、こうした公のワイン教育機関が進化することで、道産ワイン内の人材の多様化が健全に図られ、更なる輝かしいワインがこの大地から生まれることが期待できそうです。

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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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