Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2019 Part1



今日から、3日間に渡り、”Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2019”
をテーマに記事を書いていきます!
 
 
国産のブドウを100%使用して国内で造られた
「日本ワイン」を対象とした、日本で唯一の
コンクールとして17回目を迎え、
先だって7月30日に受賞結果が発表され、
そして昨日、9月1日に甲府記念日ホテルにて
表彰式および公開テイスティングが
盛大に執り行われました。
 


私は今回を含め過去にも複数回にわたり
審査員として審査する立場にあり、
またワイナリーの製造責任者として出品する
という複雑な立場を経験してきました。
        
今回の受賞結果が発表されたときには
正直言って驚いたとともに、長年私が抱いてきた
仮説が表面化したように思えましたので
嫌でなければ暫しお付き合いください。
 
以下のHPリンクに示された受賞結果をみれば
一目瞭然ですが、本年度の結果では、昨年まで
金賞受賞していた大手は、メルシャン様のみ、

そして残りの金賞受賞を
果たした多くは小規模の日本各地に点在する
生産者であったことです。


特に長野県と山形県の生産者の健闘が目覚ましく、その中にはシンデレラワイナリーとも呼べる初受賞となったところも散見されました。
 
http://www.pref.yamanashi.jp/jwine/2019fol/19prize.html
 
この事実は、そもそも資本サイズも
大きい装置産業スタイルの大手生産者でなく
とも、確実に品質を担保すれば、
業界がひしめき合う大海原の上で、
小規模生産者の小舟であっても大手生産者の
巨艦と対等に渡り合えるという、
ワインという酒類(“しゅるい”)の
種類(“たねるい”)がもつ独自性が漸く
浮き彫りにされたとも言えます。


現在も毎年増える新たなる生産者を含む、
日本国内の果実酒生産者の製造免許総数の
約8割を超えるとされる小規模生産者に希望を
与えたエポックメーキング的な結果とも
捉えることができ、大変喜ばしいものと
讃えられるでしょう。 


一部の濃縮果汁を原料としたワインを除き、
大部分のワインにおいて、原料は収穫された
生ブドウを使用し製造工程中でビールや
清酒のような仕込み水を加えないため、
ブドウを育む風土やテロワールが品質に
大きく影響します。


また、ワイン製造に伴う製造機器は
ビールなどの装置産業スタイルとは異なり、
コンパクトで比較的投資額の少ないものでも
十分な品質のワインを製造することができます。


また製造に要する人員も少なくても
対応できることから、零細企業を含む
小規模な生産者でも独創的な高品質のワインを
製造することが可能であり、生産者の規模に
見合う販売展開で身の丈に合った市場を
形成することが可能です。


そうした中で、今年の受賞結果は改めて、
日本ワインが他の旧世界を含む海外の
醸成されたワイン業界にも観られる、生産者の
規模を超えた平均的な品質の平準化がなされ、
このコンクールの効果により
日本ワイン全体の品質が向上したと
みることができるでしょう。 


一方、これら小規模生産者で金賞を含む
銀賞以上に輝いた生産者の多くは、
最も出品数が多い激戦区とされる
審査カテゴリーである欧州系赤・白において、
そのほとんどの収穫年度(ビンテージ)が
2017年、また驚くものでは2018年という 
非常に若いワインであり、欧州系赤の
部門最高賞受賞ワインが2017年産、
欧州系白の部門最高賞受賞ワインが
2018年産とコンクールの送付締切り日である 
2019年6月14日から数えて、壜詰日が非常に浅い
ワインであると推察されます。 


これは、一般的に白ワインは秋に収穫と
仕込みが行われ発酵を終え、短い熟成を経て
早いものは年明けから春に壜詰され、
また赤ワインは一般的に最低12ヶ月前後の
樽内熟成が施されて壜詰されるからです。 


このような比較的若いワインというのは、
果実の風味が明確で溌剌としており、
1日で約100近くのワインを審査する中では
非常に目立つ傾向にあります。


勿論、金賞受賞に輝くワインですから
総合的な品質が高いのはいうまでもありません。


一般的にワインの審査は8~10サンプルを
1回のフライト(審査区分)で以下の基準に
則り20点満点で審査します。


このなかで、何か前後のワインに比べて
突出した品質を示すワインが他より
高い点数を得る傾向はあります。


不思議に思われる方も居ますが、
これはミスユニバースやフィギュアスケートの
採点でも同様の事が生じ、一般的に順位差
などと呼ばれ、審査員という人が品質という
定性なものを点数という定量で測るという
審査会では避けられないものになります。


勿論、最終的には各審査員の点数の平均に加え、
異なる職域の審査員(技術者、流通、
ジャーナリスト、外国人など)で慎重に協議して
最終点数が出されて各賞に割り振られます。


 スパークリングワイン以外色調/
清澄: 0~2点香り: 0~6点味
: 0~8点ハーモニー: 0~4点計 20点 


スパークリングワイン色調/
清澄度: 0~2点発泡性・持続性 : 0~3点香り
: 0~5点味 : 0~7点ハーモニー
: 0~3点計 20点 金賞   


17.0点以上を獲得したワインを標準とする、


各部門エントリー数の3~5%    
相当のワイン。銀賞   


15.5点以上17.0点未満を獲得したワインを
標準とする、各部門エントリー数の
10~15%相当のワイン。


銅賞   14.0点以上15.5点未満を獲得した
ワインを標準とする。


 奨励賞 13.0点 以上14.0点未満を獲得した
ワインを標準とする 


この採点基準ですが、審査員によっては
絶対的な点数をザクザクと採点する人も居ます。


私の方法を説明いたしますと、
例えば上記のスパークリングワイン以外の
配点を基準にすると、


色調/清澄: 0, 1, 2点、
香り: 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6点、
味: 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8点、
ハーモニー: 0, 1, 2, 3, 4点


とすることで、各項目で真ん中となる点を
基準にプラス/マイナスで採点し合計点を
求めます。これは20点を基準にしていますが、
それを単純に半分にすれば10点になるので、
20点を基準にすることで更に細分化できるように
されたものであることが解ります。


この20点を基準とする方法は米国の
カリフォルニア大学のデービス校から
派生しており、配点内容も時代とともに進化して、日本ワインコンクールでも類似したものを
使用しています。


また、OIV(世界ブドウワイン事務局)の方法に
則ったヨーロッパのコンクールでは
独自の100点を基準とした採点が行われます。


 明日は、その採点基準に則した状況を
深く解説していきます。

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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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