Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2019 Part2



 
昨日から書かせて頂いておりますテーマ、


‘Japan Wine Competition
(日本ワインコンクール)2019“


 本日も引き続きお付き合いください
 
採点基準に則した場合、ワインの持つ風味、
いわゆる以下の
「香り」、「味」、「ハーモニー」という鼻腔、
口中にて感じる要素が豊かで大きなワインで
あるほど、審査において高い点数を
得る可能性が高くなります。
 
これは、どの飲食品でもそうですが、
風味が豊かな物は一般的に美味しく品質が
高く感じるという人間本来のもつ感性に
起因するからです。
 
また、評価の点数が高いワインであれば、
そのワインから感じる風味を表現する
文言の量が点数に比例して多くなるのが
普通であるとも言えます。


その辺りは、テレビや本などの食レポに
みられるものと同じであると
捉えれば解り易いと考えます。
 
ここからが、私が今まで抱いてきた審査結果の
傾向とワインの壜詰前の
処理との関係における仮説です。
 
コンクールの審査時点で、審査員が感じる
風味の大きさとまとまり
(ここでいうハーモニーで、ある風味と
   別の風味、たとえば果実とオーク、
   果実と酸などの融合性)
の多くを左右させるのが、壜詰行程直前に行う、
滓下げと濾過で、これは専門用語では
固液分離といい、ワイン中の固形分と
液分を分離してきれいに澄むワインにする
工程です。
 
滓下げとは、ワイン中に浮遊している 
酵母や植物性タンパク質などを卵の白身や
精製した粘土性ミネラルなどの沈殿助剤などを
添加してワインの入った樽やタンクの底に沈め、
上澄みのきれいに済んだワインを別の容器に
デキャンティングすることをいい、濾過とは
濾紙、珪藻土、また細かい膜にワインを
通過させることで、ワインを劣化させる
微生物などの不安定物質を除去することです。


簡単に説明すれば、固液分離の代表的なものは、
コーヒーをドリップで淹れるときの作業と同じで、コーヒー豆が固形分で、コーヒーが
ワインと思えば容易に理解できます。
 
話は少しそれましたが結論を申します。
 
大手様など、ビール製造を中心とした
総合酒類メーカーを企業背景にもつ殆どが、
徹底した品質規格で固められた製造管理により
緻密な仕上げと精製工程で固形分の除去等を
施してワインを安定化していると推察できます。
 
私もかつて大手飲料メーカーに在籍していましたが、このような品質規格を安易に見直すなどと
いうことは、製造の根幹を揺るがすものなので
非常に難しいものです。
 
では、多くの小規模生産者で初の金賞を
含む受賞を果たした
ワイナリーはどうでしょうか?
 
この多くは、昨今のワインメーキングで
唱えられている


「滓引き(ファイニング)を行わない、
  濾過(フィルター)を行わない」


というプロセスと添加物を省いた


「レスプロセス(減工程)、レスアディティブ
(限添加物)」


に則ったワインメーキングを 
施しているところが多くみられ、
審査時点において彼らの風味豊かなワインが
たくさんの点数を獲得できたとも
推察することができます。
 
 
私は、自分がワイン造りを学んだ米国において
 
「滓引き、濾過をワイン製造から撤廃することは
   簡単で大した技術は必要ないが、
   それらを巧みに行うことが難しく
   相応しい技術が求められる」
 
と教わりました。
 
その中で、過剰な滓引きや濾過処理は
ワインのもつ風味をはぎ取りやせっぽちな
品質にしてしましますが、不安定な固形分や
微生物が残存したワインは壜内で時間の
経過とともに、ワインを変性させて逆に風味を
劣化させる要因にもなりかねないと知りました。
 
かつて、ワイン製造技術を学んだ
カリフォルニア大学Davis校の
R.Boulton教授は、
 
「最も細かく、バクテリアなど微生物を
  100%除去できる0.45ミクロンの膜で
   濾過したワインは、濾過していない
   ワインとともに経験あるテイスターで
    目隠し試飲検査をしても、統計学的に
    風味の差異を見いだせない。  


当時、その意見に私を含む学生は教授に
異論を唱えると、


 「濾過直後は風味に差異は認められるが、  
    最低6ヶ月の壜内安定期間を経たものでは   
    差異はない。それは、濾過直後に物理的に 
   ショックを受けたワインの風味は時間経過   
   とともに元の風味に修復されるからだ。」


 と話され、よく考えてみれば、高級ワインでは
壜詰直後に出荷する事例は希で、ヨーロッパの
産地でも壜詰後に数年間の壜内熟成を行う 
生産者は珍しくないものだと納得しました。 


また、近年訪問したオーストラリアでも
輸出用のバルクワインは全て0.45ミクロンの
膜濾過を施すのがスタンダードで、壜詰され 
数ヶ月すれば風味に違和感はないと 国の
研究機関で証明されたとのことでした。 


本日は、ここまでです。
明日は、最終章となりますので、宜しければ又、覗いてみて頂けると嬉しく思います。

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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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