Silverado Hill Cellars 2000 Napa Valley Chardonnay Part1
本日からは、2000年にナパ・ヴァレーで造ったシャルドネを二日に分けて味わいましたので
その感想を記事にまとめていきます。
2000年という収穫年を振り返るとミレニアム問題への不安で幕開けたものの、さほどのパニックは起きず元旦が始まり、その年の11月には、イチロー選手がシアトルマリナーズで大リーガー野手となった、ブッシュ対ゴアによる大統領選挙開票時のゴタゴタ事件などが思い浮かびます。
その年は典型的なナパ季候で3月中旬に
雨期は終了。4月には、Bud Break(芽吹き)が始まります。
その前後はFrost Protection(防霜対策)で
ワイナリーのブドウ畑に設置された温度計が
華氏32度(摂氏0度)以下を察知すると契約している防犯アラーム会社から電話が鳴り眠い目をこすりながらNapa River(ナパ川)から汲上げた水を貯めた貯水池脇のキャタピラー製ディーゼルエンジンポンプを運転しスプリンクラーでブドウへ散水し水の熱により温度低下を防ぐ超早朝の夜勤に就くというルーチンで大切なブドウを守る産地特有の仕事が思い出されます。
その後、10日間隔の防除に併せ、ブドウ樹から伸びる新梢の芽搔作業と誘引作業を行うため人界作業をブドウ園管理会社スタッフにお願いし、6月にブドウの房に小さな白い花が咲きほこり実を結ぶ頃になると、細かいブドウの花粉がアレルギー性鼻炎を誘発し、全く効能を示さない鼻炎薬を気休め程度に服用し前年のブレンド試験などを繰り返し、7月の休暇シーズンで自社の従業員が楽しんでいる期間も留守番勤務で終えていった事を覚えています。
8月に入り、他社のワイン醸造家が休暇を楽しんだハワイやメキシコの土産話を羨んでいるとその下旬には早くも、北部の温暖なカリストガ地区でスパークリングワイン用のシャルドネの収穫が始まったニュースが新聞を飾り、心なしか焦りを感じはじめたものです。
その後は、約10日おきにブドウ園に入り畝をジグザグに歩きブドウ房の上、中、下から果実をサンプリングして糖度、酸度、pHを分析しデータをPCに入力、ブドウの熟度上昇をトラックする作業でした。
この年、発売された歴史的OSのWindow 2000は残念ながらワイナリーの経営状況では経費削減の中でほど遠く、ハード占有量の少なさの割に良く働くWindow 95を動かすPentium 486内のOfficeがやっとでした。
今思えば、そんな昔に造ったシャルドネを味わう2019年には、256ギガバイトなどという桁外れのメモリーを持つリンゴマークの携帯電話にOfficeのアプリケーションをインストールでき、膨大な分析データを保存するどころか世界中のワイン関係者と共有できるようになったのだから世の中の変化は凄まじい物です。
2000年の頃は1,000~2,000ドル程度だったワイン醸造の必需品であるpH計が、その10分の一程度の値段で件のリンゴ電話に接続した電極で測定でき、データ保存や共有などもできるようになりました!
あの黒くて無骨なボタンも飛び出ているNOKIAの携帯電話にも、漸くテトリスという初歩的なブロック崩しで暇潰しができるゲームが搭載され携帯電話の契約とともに無料で配布されるものから、人類を凌ぐほどスマートで賢くなり我々の生活を支配するまでに、”たったの20年間で進化するとは誰が予想できたか?”と、そんな“大昔”だと2000年を振り返りたくありませんが、改めて比べるとSF映画並みに驚くばかりです。
あの時代、その現実に向かい合う勇気を持ち、
彼の地でのあの頃のワイン造りを今のリンゴ電話時代に味わった感想と当時の記憶を併せ綴っていきます。
日本と異なり、雨期と乾期がくっきりと分かれた超絶的な地中海性気候であるカリフォルニアのナパヴァレーは、サンフランシスコ湾の北東に位置し、太平洋をアラスカに向かって流れる寒流の上を吹く冷たい風が湾からナパヴァレーの南から北にそよぐ。
トムソーヤの冒険を書いたマーク・トゥエインの有名な言葉に
「人生の中で過ごした一番寒い冬は、夏のサンフランシスコだった」
と言わしめたほど、冷たい風が吹くサンフランシスコは寒く、そのため南部のナパヴァレーも、8月に早くもスパークリングワイン用のシャルドネを収穫し始め、北部のカリストガ地区より風の影響を受けるため夜間はキュンと冷え込み、昼間は強い日差しとともに温度は35℃辺りまで上昇。
この夜間は10℃以下、昼間は35℃という一日の寒暖差が、高い糖度と豊かなフレーバーをもたらし、降雨の殆どない乾期の3月下旬から10月中旬に生育期間をもつ幸運なブドウは最低限の防除で病気のない健全な状態でワイン用原料として摘み取られます。
まさにナパヴァレーのシャルドネは白ワイン用ブドウの王様。
「どうだ!ピカピカのナパヴァレーの熟した
シャルドネを摘ませてやるから幸運に思え!」
とブドウ樹が黄金に輝いているかのような10月初旬のブドウ畑でした。
収穫風景をモーションピクチャーという動画で撮影して世界中に配信できる約20年後の日本で向き合ったシャルドネ。
それは、感心するほどに直向きで頭が下がるブドウでした。
カリフォルニアの夢である超絶的な地中海性気候とは異なり、ブドウの花が咲き実を結ぶ時期に梅雨入り、ブドウの実に水が入るヴェレゾン期というシーズンから糖度が上がる時期に秋雨前線。
そして9月から10月の収穫本番のステージにはフィリピン沖の低気圧が渦巻きを成し台風という有難い自然現象を日本列島に縦断させる地中海性気候で生れたシャルドネを育む環境の中は世界では類を見ないアジアモンスーン気候という台風と共存します。
「雨にも負けず風にも負けず」
そんなやっとの思いで収穫までたどり着いた時
「どうか何とか無事にここまで来ましたので、
お気に召しましたらどうぞお摘み下さい」
葡萄が言っているような10月初旬のブドウ畑でした。
ここからは、又明日以降にアップさせて頂きます!
#カリフォルニアワイン #ナパバレー #シャルドネ #ワイン
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