Silverado Hill Cellars 2000 Napa Valley Chardonnay Part2


2000年にナパ・ヴァレーで造ったシャルドネについてPart2を書かせてていただきます。


ナパのシャルドネを醸造するときは

シンプルです。


王様であるナパの葡萄それ自体の存在が

凄すぎるから。


糖度24.5%という、果汁をそのまま飲んだだけでも蜂蜜を垂らしたアプリコットジュースと桃果汁と熟したリンゴ果汁にバナナなどトロピカルフルーツをブレンドしたようなハイエンドフルーツを使った高級ホテルの朝食。


そんなブドウ果汁を仕込むという事です。


この王様を、温度の低い夜中から早朝に収穫し、優しく搾りステンレススチールタンクや樽で発酵させ白ワインにしていきます。


このようなエリアでワインを造っているワイン

醸造家は、王様に平伏す従順な家来となり、

決して逆らいません。


「ワイン醸造に使用する酵母はブドウの糖をワインのアルコールに変えるコンバーターとしてのツールでしかない」

とカリフォルニア大学デーヴィス校大学院出身の
エノロジー(ワイン醸造学 )を修めた者の言葉に驚きを隠せませんでした。


確かにビールのように仕込み水を添加せず、ブドウの水分のみに依存する醸造酒であるワインにおいて原料の善し悪しは絶対的なものです。


しかし、米と麹を原料とする日本酒で
「一麹、二酛り、三造り」というように、
「原料、酵母、醸造」として各要素が繋がって

こそ酒が生れるという概念さえもナパヴァレーでワイン造りを行うようになってから

「郷に入っては郷に従え」で倣ってきました。


しかしながら、ワイン醸造を教えて下さった

デミトリ・チェリチェフ氏は違っていました。


デミトリ・チェリチェフ氏の父は、かの有名なアンドレ・チェリチェフ氏です。


ナパヴァレーワインの歴史では必ず登場する伝説の醸造家です。


ボーリュー・ヴィニヤード、スタッグスリープ・ワイン・セラーズなど多くの優れたワイナリーのコンサルタントを行うとともに、数え切れないほどの醸造家を育てて近代ナパヴァレーワインの礎を築いたレジェンドとして知られています。


彼は元々、フランスのパスツール研究所で酵母の選抜などの研究に就いていたため、戦前に分離された未だに古典酵母菌株として知られるパスツールレッド酵母など有名な菌株をつくった時代の技術者なので、その子息であるデミトリ氏もワイン醸造において優れたワイン酵母の必要性を

感じていたのだと思います。


デミトリ氏自身も2017年に87歳で天に召されました。

こちらに関連記事が書かれていましたのでリンクを貼ります。

原料のブドウを大切に、それを健やかに発酵させるというデミトリ氏のワイン造りの哲学は私の根幹に未だに息づいています。それが、ナパヴァレーの父であるアンドレ・チェリチェフ氏からの繋がりだけで、私は恵まれすぎる機会を貰ったと

感謝しています。 


話を元に戻します。


デミトリ氏は、私に


「たとえDNAレベルで同じ酵母菌株であっても
   異なる品質のワインを造るので注意すべきで

   ある」


そう教えて下さいました。


現在では商業的に分離され流通されている酵母のほぼ全てが乾燥酵母ですがその多くは異なる酵母菌株でも同じか大変近似したDNAを示します。


しかし実際ワインにすると、その品質は雲泥の差がでる時があります。


これは

“DNAが近くても、どの元株から酵母を製品化したかで各社の酵母は、似ているか同じでも異なる“


のである。


それは、日本酒の業界では当たり前らしく、

大手の蔵元では、日本醸造協会から流通される

協会酵母を毎年ストックし、その数年間分の酵母
を用いて予備試験を行いその年の原料米と目指す
酒質に見合った酵母を決定するそうです。


ここからは、又明日以降にアップさせて

頂きます!

#カリフォルニア #ナパバレー #アンドレ・チェリチェフ #デミトリ・チェリチェフ #パスツール研究所 #酵母

エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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