Silverado Hill Cellars 2000 Napa Valley Chardonnay Part3
2000年にナパ・ヴァレーで造ったシャルドネについてPart3を書かせてていただきます。
デミトリ氏の指導で彼が強調したことは
ワインの精製ろ過、いわゆる壜詰め前の
清澄安定化でした。
ワインは発酵が終了すると、発酵中にブドウの
糖をアルコールと二酸化炭素に変換して酒を
つくる酵母が仕事終了となり活性が止み樽や
タンクなど発酵容器の底に沈殿しワインが
キレイに清澄化します。
つまり、重い酵母やブドウの植物性繊維は
容器の底に沈んでワインがグラスの中の
液体のようにキレイになるのです。
しかし、ワインの中には目では見えない
固形分が含まれており、これを吸着剤で
吸着して重くし容器の底に沈める方法や、
コーヒーや出汁を漉すようにろ過して固形分を
取り除き清澄化します。
このとき、過剰にろ過を強くするとワインの
風味で大切な部分が固形分とともに
剥ぎ取られる心配があります。
この辺りがワイン醸造での技術の真骨頂であり
技術者の腕が試されるところだと考えています。
当時、カリフォルニアでは、
この方法を「UNFITERED」と呼び
ろ過をしていない無ろ過ワインに
プレミアム価値が与えられる様に
意図的にろ過を行わずにラベルにデカデカと
「UNFITERED」
と書き出すワインも高級ワインでは
散見されました。
チェリチェフ氏と何度も健闘し、先生は
完全な無ろ過にするか商業的無ろ過として、
3ミクロン程度の粗いろ過を施し、目視では
ワインが完全に澄んでいる状態にして
壜詰めすることをアドバイスし、
私はそれに従いました。
一方、チェリチェフ氏がワインメーカーを勤める
超ハイエンドワイナリーのJARVIS WINERYではろ過を一度もしない完全無ろ過でした。
JARVIS社のシャルドネの販売価格は
シルバラードヒルセラーズの
シャルドネの3倍以上でした
(2000年当時で60ドルは超絶ハイエンド)
そのプライスレンジだったこともあり消費者を
納得させなければというオーナーの哲学と、このプライスレンジのワインは完全温度管理の下で流通と保管が為されるのが絶対条件という経路が保証されているからであったと推測します。
そのため、我々のワインはワインの成分的に
今回は説明しませんが、安定性を高めるように
醸造されて、最終ろ過は微生物除去レベルより
遙かに粗いものを使用し風味に厚みを持たせる
ことに成功しました。
それまでの当社のワインは微生物的な変性を
懸念するため、他のカリフォルニアワイン同様、カリフォルニア大学デーヴィス校推奨の0.45ミクロンの微生物除去ろ過を採用していたため、
品質は安定していましたが風味をボトル内に
残すうえでろ過による剥ぎ取り感が否めなかった
といえます。
ワイン造りとは、
ブドウの美味しさが最大限のフレーバーに達したときに収穫し、不安定な糖と有機酸のリンゴ酸とクエン酸を、糖は酵母の助けにより安定したアルコールへ、リンゴ酸とクエン酸は乳酸菌の助けにより安定した乳酸へ変換させるものである。
動画のように日々刻々と変化するブドウの風味を静止画のようにストップさせ永遠に近いように
長く保存が可能なワインに加工し壜詰めし栓を
するものです。
このときの管理で大切なことは、速やかに
健やかに醸して不快なオフフレーバーを
与えないでブドウの美味しさを最大限に引き出す
ことと、壜詰め後のワインが可能な限り品質を
崩さないようにすることです。
品質を崩すという表現はワインの品質が熟成と
ともに変化するという意味には包括されません。
ワインの健全な熟成とは、壜内で酸素と
遮断された環境で、ワインのアルコールや
フェノール成分や水分子、さらに有機酸などが
科学的に反応して味が向上することを指し品質が
崩れるというのはワインが熟成中に過度の酸化や
残留固形分の分解などで不快な風味が付加されたりすることです。
特に後者にはろ過処理や清澄処理が不十分な
ワインで起こりやすく、壜詰めの頃は風味豊かなワインに感じるものの、ワインボトルが高温に
晒されたりした不運な環境の下では、一年後に
ヌメヌメした風味の泥臭いワインに変貌して
劣化してしまう場合が多くみられます。
2000年に創られたナパヴァレーのシャルドネを約20年後の今の時代に味わっても、風味が崩れていないのは、チェリチェフ氏のアドバイスに
よる商業的無ろ過の採用が勝因であったと
回顧できます。
この辺りの話はまだまだ長くなるので、
いつの日か別の機会で適切なモデルワインを
テイスティングしながら説明したいと思います。
きょうも、お読み頂きありがとうございました。
明日は、いよいよ最終回です。
#カリフォルニアワイン #ナパバレー #ワイン醸造 #ワイン造り #チェリチェフ氏
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