ワインと胡桃ゆべし


長野に行かれたお土産で、お向かいお宅から胡桃ゆべしを頂きました。


全国で山の幸として有名な胡桃ゆべし、大好きなお菓子の一つです。早速、頂くととっても甘くて美味しい!という事で今日は、最近書き始めた「ワインと食」というテーマの「ワインと胡桃ゆべし編」を書いていこうと思います。


以前、JR東日本で有名なEcuteを企画された有名な女性の講演で、胡桃ゆべしの個包装バージョンはテッパンのお土産で、どこのエキナカやキオスクでも売上上位Iだと伺ったことがありますが、個包装のくるみゆべしは、小腹がすいた時などに最適で、なるほど納得です!


そんな胡桃ゆべしの美味しい食べ方をお伝えします!

それは「胡桃ゆべしトースト」です。


胡桃ゆべしが中央に『チョコン!』と載った食パンをオーブントースターで約5分、じわじわと胡桃ゆべしが熱で融け緩くなり、食パンとの接触面積が5倍ほどに拡大していきます! なんて言うか、胡桃シュガーペーストがペトーッって伸ばされたイメージで、それをさらにフォークで伸ばします。


一口ほおばると、胡桃の上品なナッティー感に黒砂糖の芳醇な甘さがトースト処理で熱によりカラメル化し、さらに原料でチョイ足しされている醤油の旨味成分のアミノ酸であるグルタミン酸がジュワリ・・・!と口中に広がり幸せホルモンが脳内を駆け巡るのを止められません!


そのとき、頭をよぎるのが、樽発酵したシャルドネ、いわゆるブルゴーニュのモンラッシェやムルソーを造るドメーヌの製法を踏襲したワインを構成する風味と被る要素が多いという事実でした。こうなると、ワイン醸造技術管理士というエノログは、もはや職業病で一つの姿勢みたいなものです。


シャルドネをフランス樽でじっくりと丁寧に発酵させると、シャルドネブドウの果実より濃厚な桃のような香りとともに蜂蜜を思わせる奥深い果実の風味が強くなります。そしてアルコール発酵の後に乳酸菌によるマロラクティック発酵を行うことで、ブドウ由来の刺激のある味のリンゴ酸は丸みをもつふくよかな乳酸に替わります。


さらに樽の中でワインを発酵した酵母とワインを接触して熟成させることで、酵母から融けだした成分がトーストされたパンのような風味とアミノ酸の旨味としてワイン中に残ります。そして、樽発酵したワイン由来の上品なフランス樽から抽出したキャラメルや焦がした黒砂糖のような風味、更にはオーク由来の胡桃、ヘーゼルナッツ、アーモンドを思わすフレーバーを与え、白ワインの王様とよばれる高級な風味が幾重にも重なります。


このことから、長野県のお土産である胡桃ゆべしは、単なるお菓子という価値だけでなく、長野県産シャルドネをはじめとする日本ワイン、また本家本元のブルゴーニュ白、果ては私の第二の故郷であるワイン造りを学んだナパヴァレー産の樽発酵シャルドネとのマリアージュ用のお供として無限の可能性を持っていると期待できます。


胡桃、黒砂糖、醤油など和の要素を原料にした商品はワインを支える、ペーストやソースになる可能性がまだまだ広がりそうです!


そう思い、ゆべしをWikipediaで検索してみたら、『ゆべし(柚餅子)』と現れ、本来はお菓子というより、保存食や携帯食として源平の時代に考案されたものを祖としているらしいです。柚餅子の字の如く、柚子の実の上部を切り取った後、中身をくり抜き、この中に味噌、山椒、胡桃などを詰めて、切り取った上部で蓋をする。そして、これに藁等を巻いて日陰で1か月から半年ほど乾燥させ、食べる際には藁を外して適宜に切り分け酒の肴やご飯の副食物として用いるそうで、お土産でいただいたからと三つばかり立て続けに食べるものではないことが解ります。つまり、古来より酒の肴にもなる大切な食べ物だったのです!


柚子といえば、誰もが好きな柑橘類。柚子ベースのリキュールは日本酒、蒸留酒、酎ハイと好感度ベスト3に入るテッパンで、個包装の胡桃ゆべしと同じポジションをキープしています。機会があったら、この柚子を使った柚餅子というのにトライしてアロマティックなワインを引合いに攻めのマリアージュを構築したいものです。


コロナ禍で流行の近場を楽しむマイクロツーリズムが、地方特産の旨いモノを通してワインとの相性も見ていくと沢山の発見がありますね!


良かったら、「くるみゆべしトースト」作ってみて下さい!お勧めです!!

#ワインと発酵 #食とワイン #くるみゆべし #シャルドネ

エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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