北海道のワイン達


2020年8月20日に開催される大人の科学バー in はこだて国際科学祭2020
「北海道のワインと地質のはなし」にゲスト出演させて頂きます。


そして、そこで一緒にゲストとして参加される函館のワインショップ『シャカン・セ・グー』の片岡様が、このイベントのテーマ『北海道のワイン』の予習ということでワインを送ってくださいました。今回は、このイベントの予告として、このワインのコメントを書かせていただきます。


まず一本目は函館の生産者 農楽蔵さんの『葡萄戦隊 のまさーる ぱやぱやぺてぃやん 2019』です。冒頭から長い名前! 色々と物語りがあるので、いつかお話を聞きたいモノです(^▽^) 品種はナイアガラのようですね。


ナイアガラは北米系ブドウ ヴィティス・ラブルスカで香りの特徴がファンタ・ゴールデグレープ(今はないですね)のようで、正に『ブドウの香り!』です。


このペティアンは発泡性ワインですが、シャンパ-ニュらに比べてガス圧が弱く7割ほどのプチプチ感です(ガス圧3気圧と聞いてわかるヒトいませんね)、栓は確実に密栓できるようにブリキの王冠がガッチリと耐圧ガラス壜を塞いでいるので安全です。開栓はソムリエナイフの王冠開けでユックリとガス抜きしながら抜きました!


風味は、ナイアガラのアメリカンな派手さはなく、パイナップル、マンゴ、グァバなどの南国果実にメロン、桜桃、熟れたリンゴ、白い花、僅かなスパイス、そしてパウダーっぽい酵母のニュアンス!とてもバランスの良いエレガントな自然酵母で発酵されたナイアガラでした。自然酵母で発酵されていますが、欠陥は感じられず秀逸な品質のワインです。


農楽蔵さんのオーナー夫妻はフランスで醸造を勉強されたそうです。事実、私がフランスのブルゴーニュ大学ディジョン校をある機会に訪問し教授が案内くださった授業に、奥様が当時学生として勉強されていました。お声がけしたら、なんと私の大学の遠い後輩でした!


技術にちゃんとした裏付けがある方々が手掛けたのが品質から伺えますね。自然酵母のもつ中性的な発酵特性がナイアガラの派手さを削りミュートさせて南国果実や黄桃のような風味にシフトしたんですね! 面白い体験でした。


続いて、二本目は別の日にテイスティングしました。余市の生産者ドメーヌ・アツシスズキさんの『Tomo Rouge 18』です。品種はツヴァイゲルト・レーベで遅摘みらしく濃厚なルビー色を放っています。外観は深くガッツリと来そうな前触れがありましたね!


風味はブラックベリー、ブラックチェリー、カシスなどの黒い果実、ブルーベリーなどのフレッシュなベリー、黒胡椒、丁字のようなスパイス、バラの花、タールのような鉱物、腐葉土を感じる深い味わいを種から抽出されたタンニンが支えています。また、ブドウ本来の新鮮な酸がが際立ち、まだヤングの元気さに充ち満ちた美味しさを放っています。


北国のツヴァイゲルトではビックリするような深い色で、大変丁寧な栽培をされているのに感心します。ワインは新鮮な酸が生きているので、開栓後にじっくりと時間とともに柔らかくなるのを待って飲むか、更に壜のまま熟成させると美味しくなるでしょう。


スズキさんは、調べてみたら余市で有名なピノ・ノワールを造られている曽我さんのところで勉強されたそうです。しっかりとした造り手の影響を受けると、良いローモデルのワインを観ていたのでしょう。これは、醸造家のキャリアでは大切で幸運な方だと思います。


今回の二本は、『シャカン・セ・グー』の片岡さんが温度管理されたクール便で丁寧に梱包された状態で送付くださいました。もちろん、テイスティングする直前まで温度管理しておきました。これらワインはカテゴリーでは『ナチュラルワイン』に属するものです。醸造の工程でワインを安定させる沪過工程を行わず、また酸化防止剤や微生物抑制に寄与する亜硫酸の添加も少ないか無添加も珍しくありません。それだけに、その製品の特性を知り、製造工程、保管方法、流通方法、さらには販売エリアまで熟考したワイン造りが求められます。


これらのワインの殆どが道内の一部のエリアだけでしか販売されていないのは理解できます。また、ワインを本当に大切に扱ってくれる流通経路に販売されているのも伺えます。


8月20日の翌日は、別イベントで『HACCPを伴うワイナリーの衛生管理』を話しますが、HACCPでは単なる衛生管理だけでなく、消費者の方々の手元に届くまでを包括した品質管理が求められます。そうした新しい考え方が更なる美味しいワインを市場に届ける進化に繋がることを願って止みません。


大人の科学バー in はこだて国際科学祭2020
「北海道のワインと地質のはなし」は、無料・投げ銭性のイベントですので興味のある方は是非下記サイトをチェックしてみて下さい!

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エノリューション

代表の川邉久之は、カリフォルニア、ナパバレーにて15年間ワイン醸造に携わり、国内ワイナリーのコンサルタント、醸造責任者を経てワイン醸造技術士として独立。日米30年以上のワイン醸造経験を生かしたワインに関わる問題解決と発展を使命として活動中。

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